演出:ビョン・ヨンジン 翻訳:クァク・ユンミ
キム・イダム、ユ・ヒジェ、キム・バダ、ト・イェジュン、キム・ボジョン、イ・ジビン、オ・ヒョンソ 他
2023.03.30
2023.04.16
上演中
大学路自由劇場(自由文化発電所)
【レビュー】
●「死者と生きている者、二人の主人公が出会うことから始まる作品」
『鎖骨に天使が眠っている』は、10年前となる過去と現在を行き来しながら二人の青春を淡々と描いている。
死と生、性自認、友情、家族間の愛などが作品の所々に溶け込んでおり、始まりから結末まで見る間ずっとのめり込んでいた。
胸の奥深くのどこかから大きな刺激が感じられた。
作家の途轍もない創作意欲が感じられる作品だ。
●「各自の視線で最愛の人の死を見つめる」
マイノリティを正面から扱った作品。
登場人物ごとに各自の視点から最も愛する人の死を眺める。
最大の理解者だった姉の死、また、ある誰かは友人、配偶者、親子の死のそばに置かれている。
そして数多くの死に接している“戦争ジャーナリスト”。
静かだが激しい、淡々としながらも熱い、高いクオリティの作品だ。
【作品概要】
● 作家紹介
ピンク地底人3号
1982年生まれ。日本京都出身。
同志社大学卒業後、2006年に劇団「ピンク地底人」を旗揚げした。
2014年ニューヨークから帰国後、「桃地 patric 伸弥の作品」を上演する団体 「ももちの世界」を結成し、2019年の戯曲『鎖骨に天使が眠っている』で第24回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した。
● 作品紹介
一度“失ったもの”が戻ってくるということは、ただ嬉しいだけではない。
失ったことに対する感情が再び蘇り、あるいはそのままが美しかったノスタルジーまでもが壊れたりもする。
目の前にある現実に向き合うのは、もしかしたら大変なばかりかもしれない。
しかし、それに向き合うことで人間は成長し、その姿はドラマになる。
背景は日本・京都の宇治川堤防にある一戸建ての庭。
多様な人々がこの庭を訪れ、過去を話していく。
言葉を交わすほど過去は重くなる。
これ以上重さに耐えられなくなり、限界に達したことを叫んだところで、過去は決して軽くならない。
足が地中に埋もれて動けなくなる。
そうなったとき、果たして誰が手を差し伸べてくれるのか。
【あらすじ】
2015年7月、
宇治川の堤防にある桐野家では、一家の大黒柱である桐野建人の通夜が行われている。
建人の納棺を手伝った、見習い納棺師の坂本透は疲れて庭に出る。
そこで透は10年前に失踪した建人の息子であり、自身の親友でもある桐野義男に会う。
しばらく再会を喜ぶ二人。
しかし過去の思い出を分かち合いながら、死によって破綻してしまった過去と再び向き合うことになる。
届かなかった彼らの友情、そして愛と暴力と猫に彩られた青春群像劇。
世の中には透と義男、二人だけが残る。